【本の感想】

『つぎの岩につづく』

 R.A.ラファティの短編集。16編が収録されている。
 ラファティの本は『九百人のお祖母さん』と『どろぼう熊の惑星』を読んでいて、かなり面白かったような覚えがあるのだけど、内容となると不思議なくらい覚えていない。書店でこの『つぎの岩につづく』を見つけた時に全く迷わずレジへ持って行ったくらいだからかなり気に入っているはずなのに、何とも妙な話だ。思うに、ラファティの短編作品はどれも短くてキレの良いコントのような印象で、一編読み終わると大いに拍手して、「さあ次は」となってしまうような感覚があるからじゃないだろうか。
 本書に収められている作品もまさにそんな感じで、「ホラ吹きおじさんラファティ」の面目躍如といったところだ。本書はハヤカワ文庫SFに入っているし、モチーフも一応SFらしきものが多いのだが、内容は一般的にSFという単語から連想する印象とかなり違っている。そのものズバリの「ホラ話」で、ちょっとしたリアリティ(?)を含ませるために魔神の代わりに異星人を出演させるというような印象だ。各所に皮肉と滑稽なまでの残酷さがちりばめられているが、決してペシミスティックにならずに明るく元気に語られているのがとても好ましい。
 一番気に入ったのは、最初に収録されている『レインバード』だ。これはちょっと別格という気がする。個人的には、今年読んだ短編のベスト1だと思う。ちょっと皮肉で、かなりトボけていて、それでいて結構深いところを突いているという、ほとんど理想的な出来の短編だと思う。それだけに「ホラ話」的な味は薄いが、私の好みにはこれがピッタリ来てしまった。イチオシだ。
 他の作品群も、それぞれに色々な味がある。全くSF的な要素のない『みにくい海』なども、個人的には結構気に入ってしまっている。『金の斑入りの目をもつ男』のスラップスティックな面白さや、『豊穣世界』の密度も印象深い。本書のタイトルにもなっている『つぎの岩につづく』もかなり面白かったが、ラストが今一つピンと来なくて、これはちょっと残念だった。
 私は本書を手放しで大傑作と褒めたたえるつもりはないし、誰にでも文句なしでお勧めというわけでもないのだが、これだけの作品群を目の前にして楽しませてもらうと、おいそれとは苦言が出てこない。もしかすると、それがラファティ作品の凄さなのかもしれない。

1997/06/28
『つぎの岩につづく』
R.A.ラファティ著
伊藤典夫/浅倉久志訳
ハヤカワ文庫SF(ラ1-3)

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