【本の感想】

『マンガ パソコン通信入門』

 いきなり凄いタイトルの本でアレなのだけど、大好きな永野のりこがマンガを描いているとあれば読まないわけには行かない。しかも講談社ブルーバックスだというのだから、一体どんな内容なのか興味もわこうというものだ。…もっとも、最近はブルーバックスにも「Excelがあーだ」とか「一太郎がどーした」とかいう本がボロボロとあるようなので、今更驚くにはあたらないのかもしれないが。
 一読しての印象としては、「これは、なかなかイイかもしれない」というもの。内容としてはタイトル通り、初心者向けにパソコン通信のなんたるかをマンガで解説するというよくある感じのものなのだが、マンガはしっかりと永野のりこしていてホッとしたし、本来の目的通りの「パソコン通信入門書」としても悪くないんじゃないかと思える。永野のりこお得意の自爆型性格(?)の主人公がヒロインに近づこうと悪戦苦闘する様はエキセントリックな面白さなのだが、その奮闘ぶりやぶつかる問題が妙にリアルで、かつポイントを良く押さえてあり、これは実際に普段からよくパソコン通信を使っている人が書いたものだなと感じる。このテの入門書では、悲しいかなこういうことは非常に珍しい。そういう意味でこの本は希有な入門書だと言えると思う。加えて主人公の初心者ぶりがまた堂に入っていて、「電源を入れたらすぐ使えるっつーのが正しい電気製品ってもんじゃんよォ!」「もっとフツーのわかりやすい言葉でメーレーしてくれええーっ!」「おお!? なんで『アクセサリ』の中にメモ帳が!?」などなど、その雄叫びには一々説得力があって笑わせてくれる。
 一番感心したのは、終盤でヒロインとケンカしてしまった主人公がチャットに乱入してヒロインに話しかけるシーン。ここでの「そこに居合わせた人達」の反応が妙にリアルなのだ。この辺の感触は実際にパソコン通信やチャットをしている人にしか判らないと思うので、この本の本来の(笑)読者である初心者にとっては意味がないとも言えるが、案外こういう細かいところのニュアンスからパソコン通信の良さが伝わったりするかもしれないし、演出としても悪くないんじゃないかと思う。
 本作は、永野のりこのマンガを読みたい人にも、マンガでパソコン通信に入門したい人にもお勧めできる一冊だ。…冷静に考えると、これってとても凄いことなのかもしれない。拍手拍手。

1997/09/19
『マンガ パソコン通信入門』
原作:荻窪圭
漫画:永野のりこ
講談社ブルーバックス B-1137

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