題材も内容も雰囲気もオチのあるなしも、とにかく色々でバラエティに富んでいる。全体に対してどうこう言う気にはあまりなれないくらいだ。
個人的な感想としても、とても面白く感じた作品も、全くつまらなく感じた作品も、なんだか全然わけが解らなかった作品も、今一つピンと来なかった作品もあって、やはり全体に対してどうとは言いにくい。一つ言えるとすれば、あまり気どった感じがなくて親しみやすく、読みやすかったということくらいだろうか。
個人的なお気に入りは、明るくユーモラスでありながらちょっと皮肉で悲しげな『パリ人の日曜日』、明確に皮肉が強く出されていなながら露骨でない『勲章』『かるはずみ』、どんな教訓を読み取ったらいいのかイマイチ判らない昔話のような印象の『宝石』、そして文学的な香りがありながら無造作に明るく読後感の良い『トワーヌ』など。読み終えて残った印象としては、童話の原形の伝承民話のような、人情味に溢れていながらどこか不条理なリアル感と影を持った物語が多かったように思う。
書店を物色していて目的の本がなかったので、「モーパッサンって聞いたことある名前だなあ」などという感じで買って来てしまったのだが、読んでみて正解ではあったようだ。短編が好きな人にはお勧めできると思う。
次に同じ作者の長編に手を出すかどうかは、やっぱり書店でたまたま目に入るかどうかにかかっているのかもしれない。