私の好きなマンガ家、川原泉氏のエッセイ集+α。
内容は、川原泉氏が雑誌に連載していたらしいエッセイと、川原氏による肖像画(?)の付いた哲人(哲学者)の紹介、そしていくつかの趣向による川原氏へのインタビュー。エッセイには編集者らしき人物の書いたオマケ的読み物が付随しているし、哲人の紹介文もこの編集者によるものらしい。もちろんインタビューの聞き手は編集者だし、つまりは川原泉氏本人が書いたり言ったりしたことは半分くらいしか入っていないことになる。端的に言えば、上げ底構造の本だ。
『お気楽モード哲学講座:哲人・川原教授「英知」のまるかじりエッセイ!!』というオビの売り文句にシビレてほとんど義務のような気持ちでこの本を買った川原泉ファンたる私は、読み始めてすぐにこの本の上げ底構造に気付いて少なからずガッカリしたのだが、まあ冷静に考えてみればこういうのはよくあること…というより、こういうシチュエーションで出た本は上げ底でないことの方がずっと少ないのだし、それでもファンとしては川原氏の文章やコメントを読めるだけでとりあえず嬉しいのだからヨシとしよう、と思い直した。そう思い直すと結局この本の問題はオビの売り文句が誇大であることと値段が高い(本体1,100円)ことだということになるわけだが、それこそ全く珍しいことではない。珍しくないから許されるというわけでもないが、まあとりあえず自分を納得させる材料にはなる。事実、川原氏のエッセイはそれなりに面白いのだし。
結局のところ、この本は川原泉ファンには嬉しいし、そうでない人にはあまり価値のない本ということになりそうだ。まだ川原泉ファンでない人は、この本よりも川原泉氏のマンガを読みましょう、というのが私の結論だ。マル。
しかし、結果的に私にとってのこの本の価値は、この本が面白かったかどうかということよりも、もう少し別のところにあった。まずは、川原氏がインタビューの中で好きだと言っている本などを買ってみるキッカケになったこと。そして、作品紹介や川原氏のコメントを読んで、川原氏のマンガを読み返してみるキッカケになったこと。いやはや何とも自分でもアレがナニなのだが、『笑う大天使』第3巻の「オペラ座の怪人」には危うく涙しそうになってしまった。こんな気持ちになったのは何年ぶりだろうか。ここ数年の間にも、かなりの数の本や映画やマンガに接しているはずなのだが…うーん。結局はまあ、「いいものはイイ」ということなのだろう。うん。