【本の感想】

『Delphi TECH200』

 タイトルの通り、Delphiでのプログラミングに関するちょっとしたテクニックを200ばかり集めた本。

 全体にざっと目を通してみて、確かに看板に偽りはないのだが、個人的には少々違和感のようなものを感じた。内容的に、Delphiによるプログラミングに関するテクニックというよりは、Delphiに標準で用意されていない機能を実現するためにWindowsのAPIやメッセージをどう使うか、という話題がかなりのウェイトを占めているからだ。つまり、Delphiによるプログラミングのテクニックではなくて、たまたまDelphiを使っている状況でのWindowsプログラミングのテクニックという印象が強いのだ。
 もっとも、だからと言って内容の程度が低いとか役に立たないとかいうわけではなく、むしろ実際に疑問として出て来る場面が多いのはこういう問題なのだろうとも思う。この本の内容は、方向性も何もない、文字通りのFAQ集ということなのだろう。だからなのか、全体にとっ散らかった印象も否めない。項目は一応14のジャンルに分けてあるが、これもとりあえず分けてみたというだけのようで、きちんと整理されているとはとても言えない。たまたま自分の事例に合う情報がそこにあれば役に立つが、そうでなければ何にもならないわけだ。それはこの手の形式の本の宿命でもあると思うが、この本の場合はとくにそういう印象が強い。「こういうことをやりたいのですが」「こうすれば出来ます」という形の一問一答が項目のほとんどを占めているからだろう。SQLの基本的な構文を少ないページ数でざっと解説するなど意欲的な部分もあるのだが、一方でWindowsのAPIやメッセージは何の解説もなく「これを使えば出来ます」で済まされているし、そういった意味でもやや乱雑な印象がある。
 更にこの本の乱雑な印象を強くしているのが、物理的な本としての出来の悪さだ。ページのレイアウトや文字の大きさのバランスが悪く全体に素人臭い印象なのに加え、組み版のミスでレイアウトが崩れていたり書式が統一されていなかったりということが目につき、更に文章には誤字脱字がやたらに多い。そういった面ではもう「ヒドイ」としか言えない出来だ。私が買ったのは初版なので、組み版のミスや誤字脱字については増刷の際に改善されるのだろうとは思うが、それでもこれはプロの出版社の仕事とは思えないレベルだ。
 その一方で、この本には普通の出版社の書籍では考えにくい美点もある。本の内容がそのまま付録のCD-ROMに収録されているのだ。それも、テキスト、HTML、HTML-Help、PDFの各形式のファイルが用意されている。もちろんそれとは別にサンプルコードは全て収録されているし、更にはINPRISEの許可を得て用意されたというVCLリファレンスのHTML-Help版まで付いていたりする。読者にしてみれば、このメリットは非常に大きい。内容を自由に検索して参照出来るというだけで、本の価値が倍加すると言っても過言ではないと私は思う。しかもこれだけ色々な形式で内容が提供されていれば、他にも様々な利用法が考えられるだろう。色々と厄介な問題があるのだろうとは思うが、これは是非とも多くの本に見習って欲しいところだ。結局、この程度のことが実現出来ずに「情報化社会」なんてものはやって来ないんじゃないだろうか、などと余計なことまで考えてしまったりする。

 色々と不満もあるが、この本はDelphiでプログラミングをする人の多くに役立つと思うし、内容のCD-ROMへの収録という付加価値もある。個人的に専門書籍の値段の高さに感覚が麻痺している部分もあるのであまり自信はないが、2,600円というこの本の値段は決して高くはないだろうと思えたことは確かだ。

1999/06/04
『Delphi TECH200』
Delphiマガジン編集部 著
PSネットワーク

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