【本の感想】

『Delphi Win32 APIリファレンス』

 Delphiプログラマのために、Win32 APIの基本的な部分を解説した本。
 その名の通りAPIのリファレンスマニュアル的な内容が大部分を占めているが、その解説は実例を交えて割と詳しくなされている。全体として、Win32 APIのことを全く知らない読者でも理解出来るように配慮されているところが特徴だろう。解説するAPIのジャンル毎に、関数の解説の羅列に入る前に基本的な考え方と使い方が示されている。サンプルコードは当然Delphiだし、冒頭にはAPIで使われているデータ型とDelphiのデータ型の対応表があるなど、API初心者のDelphiプログラマにとっては非常に大きな安心感がある。
 私はAPIによるWindowsプログラミングを勉強したことがないままDelphiによるプログラミングを覚え、やがて必要に迫られて翔泳社の『APIバイブル』なるリファレンスマニュアルを買ってボチボチとAPIを使い始めていたのだが、やはりそこには常に大きな不安があった。基本的な理解の欠如に、常にC言語で示される解説と実例を一々Delphiの場合に読み替えて考えなければならない繁雑さが追い打ちをかけていたのだ。この本には、そんな現状に風穴を空けてくれそうな感触がある。私にとっては、まさに渡りに舟の本だったのかもしれない。900ページ以上もある本なので、もう少し読んで(使って)からでないとあまり下手なことは言えないけれども。
 実際問題として、この本の内容は『APIバイブル』とかぶる部分も多い。しかしこの本があれば『APIバイブル』は不要なのかというとそんなことはなく、この本で解説されていないAPIのために、やはり「(ある程度)完全なリファレンスマニュアル」は別に必要だろう。最近は翔泳社の『APIバイブル』の他にもWin32 APIのリファレンスマニュアルはいくつか出て来ているようなので、これから買う人はこの本も含めてよく検討してからにした方がいいと思う。何しろ、この手の本はどれもこれも厚くて重くて高いのだから。

1999/06/04
『Delphi Win32 APIリファレンス』
John Ayres 他 著
光田秀 訳
アスキー出版局

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