とりあえず『はじめてのPerl Win32システム』を読み終わって、この本からははCGIプログラムの作り方はあまり学べないことが判ったので、今度はCGIの本を探す必要が出て来た。
書店に行ってみると、「すぐに使える」とか「これでクールなホームページを」とかいう類いを最初から除外することにしても、CGIに関する本はかなり沢山あるようだった。やはりPerlとCGIをセットで解説している本が多いのだが、内容的には意外にマトモなものもかなりありそうに思えた。私としてはとにかくCGIを主題として扱っている本を探したわけだが、少々意外なことに、オライリーの本の他に、充分にキチンとした内容に見える本が2冊も見つかった。しかも、この2冊はどちらもオライリーの本よりかなり薄くて安い。パラパラと中身を見てみたところ、オライリーの本には私には関係のない記述も多いようで、どちらかと言えば他の2冊の方が簡潔にまとまっているようにすら思えた。しばらく悩んだ揚げ句、結局私は今回もオライリーの本を買って来てしまった。要するにこれはブランド指向なわけで、安っぽいバッグに喜んで大金を払う輩と同じ衝動に動かされているのかと思うと気恥ずかしくなるが、何というかやはり、私の中ではオライリーの書籍における「情報の完全性」への信頼が絶大なのである。
そんなわけで選んだこの本なのだけれど、今回ばかりは私の選択は大正解とは言えなかったらしい。
まず、この本にはやはり私には必要のない情報が多かった。…というより、私が欲していた情報は、この本の1/5程度で全部だったのだ。この本に書かれている残りの情報は概ねUNIXサーバを使った本格的なネットワーク環境におけるCGIプログラムの活用に関するもので、私のようにサービスプロバイダと個人契約してダイヤルアップ接続、などという環境とは縁遠いものだ。書店で立ち読みした時点でそれはある程度判っていながら、それでも色々と参考になることや予備知識のようなものが得られるのじゃないかと考えてこの本を選んだわけなのだけれど、結果としては文字通り、私にとってはこの本の1/5しか必要でなかったようだ。私が欲していた情報は、私が想像していたよりもかなり少なかったのだ。それでも欲していた情報がほぼ完全に得られたのだから文句を言う筋合いではないのだが、珍しく他にもマトモそうな本が見つかっていて、しかも結果的にそちらの方が私のニーズには合っていた可能性が高いとなると、ちょっと悲しくなったりもしてしまう。
加えて、この本はオライリー・ジャパンの本としては珍しいくらいに翻訳の質が低い。かなり直訳に近いと思われる不自然な言い回しや、妙なつながりの文章の流れなどが散見され、意味がスッキリと伝わって来ないところが多い。時には、明らかに日本語の文章としておかしいと思える部分もある。これらはまあ一般的に技術系の翻訳書などにはありがちなことでもあるが、オライリー・ジャパンの翻訳は全体的に非常に質が高く、日本語の文章としてもとても読みやすいことが多いので、この本にはかなりガッカリさせられた。
私としてはこの本によって「オライリー最強伝説」に土がついてしまったような恰好なのだけれど、念のために重ねてフォローしておくと、この本は私が必要としていたCGIプログラミングに関する情報をほぼ完全に提供してくれたし、私にとって役に立たなかった多くの情報も、当然ながらそれを活かせる環境の読者にとっては有用なものだろう。翻訳の質の低さは明らかだとしても、充分に読めるレベルではあるし、一般的な基準から言って、この本を「悪い本」だとはとても言えないと思う。
私にとってはちょっとナニだった、という話だ。