【本の感想】

『幽霊たち』

 うーん…。面白いんだけど、どうも今一つテーマがスッキリと伝わって来ない。私の理解力というか、予備知識が足りないのだろうとは思うのだけど、それにしてももう少しスッキリ感が欲しい気がする。
 巻末になんだかいくつもある解説には、この作品が三部作のうちの一つであるとか、現代文学のある段階の代表作として高く評価されているとかいうことが書いてあるが、私にとってはそんなのは知ったことじゃない。確かに「色んなものを削ぎ落とし排除した」面白さは感じられるし、プロットにも魅力があると思うので、それを作品として楽しみたいだけなのだ。いわゆる現代文学がとっつきにくいのだとすれば、それは作品自体がとっつきにくいのではなく、読むにあたって必要とされる(らしい)予備知識や、それを殊更に強調した解説がわずらわしいのではないかと思ってしまう。

 …と、なんで突然こういう作品を読む気になったのかと言われそうだが、別段理由はないのだ。例によって、書店で何となく手に取って、何となく面白そうな気がしたから買って来てしまった。例によって、作者に関しても作品に関しても、予備知識は全くない。作品との出会い自体を楽しみにしている、なんて言うとなんだかカッコつけてるようにも聞こえそうだが、実際そうなのだから仕方がない。カッコイイことでもエライことでも何でもなく、単なる気まぐれな趣味というだけのことなのだ。
 だから、この作品の作者の他の作品を今後私が読む可能性は、かなり少ない。その辺が気まぐれたる由縁で、私の読書のいい加減なところでもある。作品に対しての感想をまとめたりするのは好きなのだが、「研究」はあまり好きではないのだ。

2000/04/23
『幽霊たち』
ポール・オースター 著
柴田元幸 訳
新潮文庫(オ9-1)

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