【本の感想】

『情報アーキテクチャ入門』

 タイトルだけ見ると何のこっちゃと思うが、日本語で「ウェブサイトとイントラネットの情報整理術」、英語で「Designing Large-Scale Web Sites」というサブタイトルがついている。要するに、スマートで解りやすく使いやすいサイトを作るにはどうすれば良いか、ということを論じた本である。

 こういう題材の本を読む時には、どうしてもどこかで「目から鱗がボロボロ」という風なことを期待してしまうものだが、もちろんそんな体験は滅多に出来るものではない。この本に書かれていることも、はっきり言ってしまえば別に目新しくも何ともない、普段私も考えているようなことばかりだし、解説の中で再三強調されるのは「初期段階で徹底的に計画して文書を作れ」「ユーザーの視点を忘れるな」という、どの分野においても重要な、ある意味当たり前のことだ。
 しかし、そういうことを系統立てて言葉にしたものをこうして読むことで、実際の現場でそれをしっかり活かせるようになる、ということはあると思う。また、この本の後半部分で論じられているサイト制作計画の具体的な進め方と作成する文書の見本は、アーキテクトという立場で漠然とした計画を進めて行くにあたって、自信を持って作業に取り組むための良い指針になりそうだ。
 気になったのは、どうも翻訳がカタイというか、いかにも翻訳書然とした不自然な流れの文章で、言わんとするところがスッキリと伝わって来ない部分が多くあったこと。内容からして言葉そのものを扱う部分が比較的多くあり、それをそのまま英語から日本語に訳すということ自体に少々無理があるというところもあるのだが、それを差し引いて見ても、この本の翻訳はあまり良くないと思う。オライリー・ジャパンの本には珍しいことなのだが。
 まあそれでも総合的に見て、大きなインパクトや鋭い切れ味のある内容ではないが、もっともなことを堅実に書いてある、悪くない本ではあると思う。ある程度以上の情報量を持つWebサイトを制作しようという人は、一読しておく価値があるかもしれない。

2000/11/01
『情報アーキテクチャ入門』
Louis Rosenfeld/Peter Morville 著
篠原稔和 監訳
牧之瀬みどり/長谷川智可 訳
オライリー・ジャパン

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