【本の感想】

『夜のフロスト』

 黄金のワンパターン、なんだろうな、既にこれは。
 この作品は、ジャック・フロスト警部を主人公とするシリーズの第3弾ということになるのだが、ここへ来て完全に「水戸黄門的」ワンパターンが定着した感がある。殺人的な忙しさの警察署を舞台に、雪崩的に襲って来る複数の事件に主人公をはじめとする署員たちがてんてこ舞いで対応する有り様を描くノリも、仕事熱心で人情家である一方下衆で利己的でもあるキャラクターたちも、そして「若く野心に満ちた」新米刑事がフロスト警部のパートナーとして配属されるところから始まるという図式も、全てがお約束通り。考えてみればこれらは1作目から全く変わっていないわけで、3作目にしてパターンが定着したと感じるのはあくまでも読んでいる方の感覚でしかなく、作者にしてみれば1作目の時点から出来上がっていたものなのかもしれない。
 そんなわけでとにかく、この作品はフロスト警部シリーズが好きな読者には100%期待通りの出来であり、はっきり言ってしまえばそれ以上でも以下でもない。特別に新しい要素や巧妙な謎解きで驚かせてくれるわけではないが、このシリーズの魅力は随所で充分に発揮されている。良くも悪くも、人気シリーズの第3作ということなのだろう。

 結局のところ、私はこのシリーズの雰囲気が割と気に入っているので、次が出たらまた買っちゃうだろうとは思う。

2001/10/29
『夜のフロスト』
R・D・ウィングフィールド 著
芹沢恵 訳
創元推理文庫(Mウ8-3)
ISBN4-488-29103-1
定価:1,300円

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