なんとも能天気な映画。前作『スピード』の何倍もの制作費を投じて何倍も派手なアクションシーンを連発し、軽いノリのお約束的演出とジョークを折り込み、あらかたの緊迫感と説得力を失っている。
個人的に、こういう映画はとても中途半端に思えてしまう。脚本のノリは完全にコメディなのだが、悪役の犯罪は本気だし殺人もあるし、それ以外でもボロボロと人死には出るし、かといってブラックユーモアがあるわけでもない。結局はアクションが主体なのだから、それをうまく見せるには脚本と演出に説得力、緊迫感、臨場感、が必要だし、コメディにするなら思い切ってスラップスティックな面白さを追求するか、よほど軽妙なジョークを織り込むかしなくてはいけないと思う。金のかけ方と物の壊し方は半端じゃなくて、凄いとは思うんだけど。
主人公対悪役の「一対一の対決(駆け引き)」という図式は前作を踏襲していて、これはとても面白いと思う。悪役のウィレム・デフォーはかなりいい味を出していて、もう顔からして「そのもの」という感じで良かったし、その「頭脳犯」(かなりマヌケなので「知能犯」ではないよな)ぶりもなかなか見事だったのだが、対する主人公がその頭脳犯の仕掛けをとにかく馬力一直線でガンガン切り抜けてしまうのが「なんだかなー」である。しかも何より、主人公のジェイソン・パトリックがカッコ良くないのが痛い。黙ってそこにいるだけで絵になってしまうキアヌ・リーブスとは、やはり比べるべくもなかった(脚本の責任もあると思うけど)。サンドラ・ブロックは前作同様かなり役にハマッていて悪くなかったし、実質的にはこちらの方がメインキャストなんじゃないかと思うのだけど、脚本の内容はあくまでもジェイソン・パトリックの方が主人公になっているわけで、これは如何ともしがたいという感じ。
ラストでぶち壊すためだけに港町を一つ作ってしまったとかいうのは確かに凄いと思うし、映像的にかなり迫力が出ているとは思うのだけど、「だからなんなの」と思ってしまう部分があるのも事実だ。だったら『トゥルー・ライズ』の橋のシーンの方が凄かったよなあ、なんていう感想が出て来てしまう。『トゥルー・ライズ』も派手で能天気なアクション映画だったが、本作よりも能天気ぶりが徹底していて良かったように思う。…しかし、このテの映画を観るといつも思うのだけど、こんな撮影をしていて、海洋汚染とかを起こすことはないんだろうか? グリーンピースあたりが怒鳴り込んで来たりしないのかなあ?
まあ、こういう映画もあっていいとは思うけれど、そもそものノリからして前作『スピード』とはかなりのギャップがあるように思うし、これでは前作がちょっと可哀想に思えてしまう。とりあえず、『スピード3』は作られないといいな。