なんだか、お子様向けの怪獣映画になっちゃったな、という印象。
何と言っても、とにかく内容がない。…いや、別に内容がある必要はないんだけれど、それを露骨に観客に感じさせちゃうのはやっぱりマズイと思う。最新のSFX技術を駆使してリアルな恐竜と人間の追いかけっこを描きたい「だけ」の映画なのは最初から判っているんだし、観客としてもそれを期待して観に行っているわけだけれど、「本当にそれだけ」ではとても感情移入出来ないし、ハラハラドキドキするわけにも行かないだろう。メインの「追いかけっこ」とそれに付随するサスペンス描写に力(と上映時間)を使いすぎて、それ以外の部分が思い切りおろそかになってしまったという感じ。説明的なセリフの連発で強引に設定を説明してストーリーを進めて、「はい、サスペンスです」では「ああ、そうですか」という反応になってしまう。主人公の数学者とその娘、そして恋人を中心に据えて、それらのキャラクターのカラミやプライベートな事情なども少々描こうとしているが、その内容がステレオタイプで面白味がないため、オカズどころかスパイスにもならずに終わっている。『白鯨』の船長になぞらえられる雇われハンターは非常に感情移入のしやすい便利なタイプのキャラクターなのだが、これも扱いが中途半端でつまらない。何とかもっとキャラクターの魅力を前面に押し出す演出が必要だったのじゃないかと思う。
映像面では確かにかなり頑張っているとは思うが、前作『ジュラシック・パーク』の時ほど強烈な印象はない。確かに細かく見れば色々と進歩しているのだろうとは思うが、大雑把な印象では前作と大して変わらないのだ。モデリングのリアリティや俳優とのカラミなどでかなり技術的な進歩があったのだと思うが、前作ではそのあたりを演出でカバーしてあまり気にならないようにしていたので、いざ改善されても大して印象が変わらなかったのじゃないかと思う。むしろ問題は恐竜の動きや合成画面の細かな違和感で、こちらは前作で気になっていたところがあまり改善されていないように思えた。今後はこの辺を課題として研究して欲しいものだ。
終盤で主人公たちが島をから脱出する場面では、「…え? まさか、これで引いて3作目を作るつもりか?」と一瞬目の前が暗くなりかけたが、そうではなかったようで一安心。町中でティラノサウルスが大暴れする姿は、説得力には欠けるもののそれなりに痛快だった。この辺の「期待した通りのものを見せてくれる」感覚はさすがスピルバーグという感じだが、この作品では、そこに加わる工夫がちょっと足りなかったのじゃないかと思う。