劇場映画をTV画面で、しかもカットされたり間にCMが入ったりするTV放映で観て感想を述べるのはどうかと思うのだけど、そもそもここに書いているのは個人的な見解であって、公平な評価などでは全くないのだから、まあいっか、ということで、今後はビデオやTV放映で観たものについても心に留まった作品については書いて行こうと考えている。
さて、今回は国産SFホラー映画『パラサイト・イヴ』。
率直な印象は…まあ、こんなもんなのかな。
予告編を見て、「多少面白そうに見せてるけど、本当はこんなもんなんじゃないの?」と思っていた「こんなもん」がバッチリ的中という感じ。
原作はベストセラーになった小説で、これについてはかなり良い評判を聞くのだけど、映画を観ていて「原作は面白そうだ」と感じることもなかった。本当に原作も大したものじゃないのか、それとも映画が原作の良さを全て捨ててしまっているのか…。結局私としては原作も読まないと気が済まないかもしれない。(我ながら難儀だとは思うのだけど)
まず、この映画は「科学的な根拠に裏打ちされた、説得力のあるホラー」という触れ込みだったはずなのだが、私には全くそう感じられなかった。もちろん実際の科学知識や学説が使われてはいるのだが、その考察の程度も使われ方もその辺に転がっている幾多の三流SF作品(映画、小説、マンガ、アニメなどなど)と全く変わらないレベルに思える。演出面での説得力もお寒い限りだ。
キャラクターもストーリーも、実にありがちなもので面白くない。筋立ては非常に古臭いSFを思わせる単純なものだし、展開も非常に強引で、現代の基準から見るとみっともないとすら思える。画面はそこそこにキレイでカメラワークも悪くないが、かなり演出過剰。一生懸命幻惑的な画面を作ろうと努力しているのだが、それが半分しか成功していないため「努力している感じ」が伝わってきてしまう。画面のセンスはそう悪くないと思うのだけど…。
いわゆる「ホラー映画的」な演出も各所に見られるが、どれも手垢がついた上にカビが生えたようなものばかり。病院のセットや衣装を不自然なまでにレトロなものにするなど、雰囲気作りに関しても過剰な「工夫」が面映い。不自然でも何でも盛り上がればいいじゃん、という感覚で突っ走るのならそれもいいとは思うのだが、この映画にはそこまで吹っ切れた爽快感はない。そういう意味では、少々中途半端なのかもしれない。
唯一、助手の女性が密かに主人公に好意を寄せているという設定が、あまり押し付けがましくない形で表現されていたのが好ましく感じられた。ただし、ラストでのこの女性役の女優の演技は今一つピンと来なかったのだけど。
結局のところ、全体の印象としては「その辺によくある、出来の良くないSF仕立てのホラー映画」としか感じられなかった。主人公役の三上博が「現在の日本では、このジャンルの映画が本気で作られること自体が重要だ」というようなことを言っていたらしく、私も全くその通りだとは思うのだが、出来映えがこんなものではどうしてもため息しか出て来ない。
日本でもクオリティの高いエンターテイメント映画を作れるはずだ、ということが叫ばれ始めてかなりになるが、結局現在に至るまでほとんど実を結んでおらず、当初期待していた私も最近はあきらめの気持ちの方が強くなってきている。こういうことには数十年単位の時間がかかるものなのかもしれない、などという思いが段々と強くなって来ている。なんとか頑張って欲しい、とは思うのだけど…。