いやあ、これはキてる。人気の若手俳優レオナルド・ディカプリオを起用して、ロマンス劇の古典中の古典『ロミオとジュリエット』を現代的なセンスで料理してラブストーリーの王道を狙った作品…かと思って観たら、全然違うんだもの。
この作品は、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を本当に「そのまんま」現代に持って来た映画だったのだ。「原作:シェークスピア」というクレジットは単なるお飾りではないらしい。
もちろん、単純に舞台を現代に置き換えただけでは映画にならないから、道具立てにもキャラクターにも色々なスパイスが加えられているし、画面の作り方などもかなりエキセントリックになっていたりするのだが、その中でストーリーはもちろん大雑把な構成も台詞もほとんど「そのまんま」使われていて、実に「濃い」仕上がりになっている。原作の設定や人物の行動などで現代の感覚に合わない部分も、手直ししてごまかすようなことをせず強引に「そういうもの」として描かれていて、観ている方としては最初のうちかなり戸惑うのだが、やがてその圧倒的なパワーに押しまくられて納得してしまう。ノリとしてはもう『ストリート・オブ・ファイヤー』あたりに近いんじゃないだろうか。
要するに、この作品は『ロミオとジュリエット』を現代風にアレンジして昇華しようとしたものではなく、100年前に『ロミオとジュリエット』を観た観客が味わった感覚を今また作り出そうとしたものなのじゃないか、という気がしている。
私は個人的に、パワーがあって、ノリが首尾一貫していて、俳優がちゃんと演技している映画にはとりあえずOKを出してしまう傾向がある。そういう意味で、この作品は私的にはOKだ。パワーやノリは上記の通りだし、レオナルド・ディカプリオの演技は大したものだし、ジュリエット役の女優も可愛い(可愛いのは演技じゃないかもしれないが(笑))。
ただし、「ディカプリオ主演の甘いロマンス映画」を普通に期待して観るとガッカリしてしまうんじゃないかと思う。映画もヒットしたしビデオもかなり売れているようだが、あまり万人向けの作品ではないような気がする。