面白くない。こんなに古臭い映画だとは思わなかった。
予告編を見て、もっとこう「暗くジメジメした何か」とか「鬼気迫る何か」とか「異様にリアルな何か」とか、とにかく「何か」があるんじゃないかと期待していたのだが、実にパーフェクトに何もなかった。非常に軽いノリの、非常に古臭いSF仕立ての、非常にありがちなエンターテイメント映画でしかない。
まずとにかく、プロットが非常に単純で古臭い上に説得力がない。5000年ごとに襲って来る「悪」とは一体何なのか。なぜそれが地球に向かって来るのか。フィフス・エレメントをもたらした異星人はどうしてそんな力を持っているのか。持っているのならどうして「悪」を完全に滅ぼせないのか。「悪と戦う」ストーリーを作るのなら、まずこの辺りの辻褄を合わせることから始めるのが当たり前じゃないだろうか。こういうことを全部無視して済ませられたのは、もう30年も前のことだと思うのだが。
そして、そんな風にやたらスケールの大きな話を持ち出すわりにはストーリーが小ぢんまりとしていて、道具立てや演出もほとんど「お遊び」的なノリに終始している。細かいところに凝ってはいるのだと思うが、そもそもの「未来観」「異星人観」が見事なまでに古臭いので、細かなこだわりの数々は観客を引き込むためではなく制作者が楽しむためになされているような印象を受ける。異星人がみんな二足歩行で、使っている道具についている地球人サイズのボタンやスイッチを太い指でかろうじて操作しているなんて、「本気かよ」と思ってしまう。戦闘機のパイロットは操縦桿をガチャガチャ揺らすし、「神殿」だの「壁を開く謎」だのの扱いはインディ・ジョーンズより陳腐。日常生活用品などもいちいち「未来っぽく」描かれているが、その「未来っぽさ」はやはり30年前のもの。今時「いきなり料理を出してくれる調理機」だの「ビニールみたいなシーツ」だの、「空飛ぶ自動車」だのに未来を感じる観客が本当にいるんだろうか? そもそも、ビル街を上下構わず飛んでいるタクシーに、誰がどうやって乗るというんだろう?
とにかく全てが古臭く、リアリティがカケラもない。何も知らない人にこの映画と『スターウォーズ』を両方観せて、「どちらが新しい映画でしょう」と質問したら、きっと答えに迷うんじゃないだろうか。
この映画は要するに、「古き良きSF」のファンが自分たちのために作った、60年代以前のスペースオペラへのオマージュなのだろうと思う。そう考えても、出来はあまり良くないと思うけど。