いかにも「ハンドカメラで撮りました」という記録映画風(?)の見づらい画面にまず驚かされるが、結局はかなり引き込まれて観てしまったので、この演出は成功しているのかもしれない。
誰もが多少なりとも迷いを抱えている部分を、単純に、ストレートに、そして露骨に突いて来るので、観客としては心穏やかではいられない。実際、観ていて辛く感じるところもあった。それだけ私が画面に掴まえられてしまったのは、主人公のキャラクターが「立ちまくって」いるからではないかと思う。この独特の表情はこの女優の個性なのか、はたまた演技なのか、とにかく異様なリアリティで胸に迫って来る。こちらとしてはタジタジだ。
そんなわけで、この映画は非常に迫力のある形で、痛いまでに解りやすく問題を提起してくれるのだが、ラストのまとめ方がおざなりになってしまったように私には思えた。中盤で主人公の行いを諌めようとする義姉や担当医の言葉にはとても説得力があったのだが、ラストに至ってそれがほとんど「なかったこと」になってしまう。
エピローグでの主人公の夫の心境が今一つ伝わって来ないのも残念だし、とにかく終盤にかなり不満があるものの、最近観た映画の中ではかなり心を動かされた方だと思う。一見の価値は、あるような気がする。
そうそう、この映画は全体が七つだか八つだかの章に分けられていて、その合間に音楽と風景の映像が挿入されるという構成になっているのだが、この「合間の映像」が後に行くほど長くなっていて、最終的には数分(だと思う。計ったわけではない)にも達するのだ。もちろん演出としての意図でこうなっているのだと思うが、私には単純に「タルい!」としか感じられなかった。これもちょっとマイナス印象かな。