うーん、これは傑作、かもしれない。色々な意味で、よく出来ていると思う。
殺人狂カップルの行動を追うストーリーを、TVをはじめとするマスコミを様々なレベルで茶化したりパロディしたりしながら生き生きと表現した作品…とでも言えば伝わるだろうか。なかなかに、内容と魅力を一言では表現しにくい作品だ。
観ていてまず感じたのは、かなりぶっ飛んだ表現が多用されている割に、演出意図が非常に解りやすいということ。表現方法としてのTVドラマのパロディなどとは違うレベルで、このこと自体がTV的演出のパロディなんじゃないかと思えたりもする。心象風景の描き方なども、具体的な画面としてはかなりストレートだ。それだけに、絵的な新鮮味や面白さが今一つという気はするが、それはまあそれでもいいのだろうとも思える。
この作品には色々な手法で色々なレベルの皮肉が実にふんだんに散りばめられているのだが、それらが私にはとても適切かつ妥当なものと感じられた。チープなTVドラマ風に表現された場面で(恐らく)「Fuck」という言葉が全て消されて「ピー」音になっているところなど、苦笑せずにはいられない。恐らく字幕を追わずに台詞などを全て直接聞き取ることが出来ればもっと色々な小技が利いているのだろうと思うと、ちょっと悔しくなるくらいだ。
そんな風に全体が皮肉とパロディとバイオレンス(?)で出来ているにもかかわらず、単純に世を拗ねて斜に構えているという浅ましさが感じられないのも、好印象の大きな要因だと思う。これは「とことんまでイッちゃってる」という開き直りとはまた違う、しっかりと考えた上で作られた作品の潔さのようなものだと思える。
この作品はお世辞にも万人向けとは言えないが、出来る限り多くの人に観てもらいたいという制作者の意気込みが込められているように、私には感じられる。実際、割と多くの人が楽しめる作品に仕上がっているように私には思えるのだが、さて、どうだろうか。