なるほど、これがあったから『レオン』が出来たんだな、と、大納得の作品。
それは、『レオン』の準備段階や前実験としてこの作品があったということではなく、むしろ逆に、この作品で「こっち」をやったから、『レオン』では「あっち」へ行くことが出来たんだな、というように私には感じられた。
この作品では、かなり素直でストレートなやり方で「女工作員」が描かれている。もちろんそれは通り一遍の描き方がされているということではなくて、女工作員というキャラクターに対する取り組み方の方向性が真正面から真っ直ぐだということ。「殺し屋(工作員)を描くなら、まずはこう行きたくなるよな」という描き方だ。そして、この作品で追求しなかった(時には逆の)方向性を同じ「殺し屋」という題材で追求することで、『レオン』になったのじゃないか、と私には思えたのだ。
まあそれはそれとして、この作品自体について。
最大の魅力は、やはり全編に感じられる独特の悲壮感だと思う。フランス映画っぽいと言えばそれまでだったりするのかもしれないが、このちょっとほの暗い、ささくれ立った、それでいてあまり退廃的な感じのない雰囲気は、やはり魅力的だ。
ただ、これもやはりフランス映画っぽいことなのかもしれないが、主人公をはじめとする各キャラクターの「悲しさ」はよく伝わって来るのだが、それ以外の心の動きが今一つ伝わって来ない。そうすると、全体のストーリー展開にも今一つ説得力が感じられず、ただただじっとりとした悲しさだけが残るような印象になってしまう。ラストがちょっとはっきりしない(ように私には思えた)こととも相まって、これでこの作品はかなり損をしているような気がする。
「限界のないものが二つあるわ。女の美しさと、それを乱用することよ。」
予告編でも使われていた決め台詞的な一句だが、私にはちょっと間抜けな台詞になってしまっているように思える。恐らく訳が悪いんじゃないかと思うが、もうちょっと何とかならなかったんだろうか。