【映画の感想】(TV放映にて鑑賞)

『リング』
★★

 頑張ってはいるんだけど、もう一つ工夫が足りない、と思う。
 現在の日本映画界においてはこういう荒唐無稽なホラー映画をメジャーな場で大真面目に制作したということ自体に意義があると思うし、実際それなりに見られる仕上がりになってもいるのだけれど、率直に言ってしまえば面白くない。
 どうも、この原作を映画化すること自体に無理があったように思える。原作のスケール感を映像化することが困難だとかいうことでは全くなく、むしろその逆に、文章で主人公の恐怖を切々と読者に伝えている原作をそのまま映像にしても全く恐さが伝わって来ない、ということだ。原作では男性だった主人公を女性に変えて画面映えを増し、若手の中では演技力に対する評価の高い女優を起用することで地味ながら切実な恐怖を表現しようとしたのだと思うが、私の印象としては「それだけじゃ全然ダメ」だった。主人公を演じる女優は実に堅実な演技を見せているが、あまりにも堅実過ぎて面白味がなく、それだけで観客を引っ張って行くような魅力はない。それならば画面や音響や演出などに一々工夫して観客を引き込む必要があると思うのだが、これらも全て堅実かつ真っ当な作りで、とくにどうということもない。結果として、それなりに見られるクオリティに仕上がってはいるものの、切実な恐怖感などはほとんど伝わって来ない平凡な作品になってしまっている。そして、このストーリーは切実な恐怖感だけが唯一最大の魅力なのだから、つまりは全くつまらない作品になってしまっているということだ。
 主人公を女性にした上高山と元夫婦という設定にするなど、映画作品として原作をいじるつもりがあるのなら、もっともっと設定を大幅に変更してでも映像的な演出を優先して工夫するべきだったのじゃないかと私は思う。

 それにしても、ラストのカットは『ターミネーター』のパロディにしか見えないのだけど、これってギャグなんだろうか?

1999/01/23
『リング』
監督:中田秀夫

to TopPage E-Mail