【映画の感想】(ビデオにて鑑賞)

『ドーベルマン』
★★★★

 悪い意味でなく、全編がマンガ的な作品。…もっとも、私がマンガを引き合いに出す時は悪い意味であることはまずないのだが。
 とにかくカメラワークの凄さにまず驚かされる。それは映画好きだからこそわかるという類いのものではなく(それなら私にはわからない)、誰が見ても普通に凄いと思える華々しさを持っている。全体を通して、画面としてのカッコ良さを最も大切にして作られているという気がする。一般的な意味でのリアリティなどはとりあえず横へ置いといて、とにかく強烈なインパクトと画面のカッコ良さ。その狙いはかなり成功しているように私には見えた。聞くところによると、これはフランス映画界ではかなり画期的なことらしくて、この作品も批評家にかなり叩かれたようだ。フランスの映画界って、実は日本の映画界と似たところなのかもしれない。
 この作品でもう一つ感心したのは、ドラッグ的なトリップ感(ヒドイ日本語だな)が実にうまく表現されていたこと。ディスコ(?)の興奮と銃撃戦の狂瀾とを重ね合わせ、それがフッと静まったところで「現実にようこそ」とは恐れ入った。この辺りもありがちな要素ではあるが、こんなにも「わかりやすく」作られているのは希有なことだと思う。これに限らず、この作品はそのアンチモラルな内容とは裏腹に(だからこそ、とも言えるのかもしれないが)全てにおいて「多くの人にわかってもらえるように、楽しんでもらえるように」という意気込みで作られているように見えるのが好印象だ。それが余計に私には「良い意味でマンガ的」という感想を抱かせるのかもしれない。

1999/05/17
『ドーベルマン』
監督:ヤン・クーネン
原作・脚本:ジョエル・ウサン
製作:フレデリック・デュマ/エリック・ネヴァ
製作総指揮:マルク・バシェ

to TopPage E-Mail