正直言って私はあまりアメコミが好きな方ではないのだが、「悪のヒーロー」という図式には非常に惹かれるものがある。原作者が「日本のマンガやアニメから大きく影響を受けている」と公言していることにも興味を引かれた。
で、実際に観てみてどうだったかというと、まあ、こんなものかな、というところ。私にはやはり旧来のアメコミにしか見えないし、かつハリウッド映画にしか見えない。『仮面ライダー』や『サイボーグ009』にある哀愁や『デビルマン』にある禍々しさなどは感じられないし、むしろ『ダークマン』なんかを思い出して、これって別に新しくも何ともないなあ、という印象だった。せっかく主人公がはっきりと「悪のヒーロー」という設定になっているのに、『バットマン』の方がずっとダークな感じがするのでは興醒めだ。
どうしてこんな印象になってしまうのかと考えてみると、どうもこの作品には全てにおいて「突き抜けた」感じがないのだ。観る方としては、「悪のヒーロー」には「とことん残酷」だったり「とことん凶悪」だったりする行動とか、「とことん暗い」シチュエーションとか「とことん悲惨」なストーリーとか、「とことん一途」な復讐心とか、とにかく「極端な何か」を期待するのだ。それが、この作品のように当初の設定がかなり悲惨というだけでその他はソツなくまとまってしまっているような印象だと、どうしても「半端」に思えてしまう。加えて主人公の強さや戦いぶりまで地味とあっては、欲求不満が残ってしまう。唯一、敵役(ヴァイオレーター?)の道化ぶりがなかなか堂に入っていて面白かったが、これもいざ戦う段になると単なる怪物になってしまうし、どうも新鮮味がない。
とにかく、せっかく魅力的な要素を色々と持っているのに、それがほとんど生かされずに最後までスッキリしないという感触だ。原作がどんな風なのかは知らないが、恐らくもう少し何かがあるんじゃないかと思える。これはこの際、続編に期待してしまおうか。
この作品を観ていて一つ思ったのは、やはりお国柄というのは大きいな、ということ。日本の『デビルマン』は悪魔を「デーモン族」という生物として設定することで説得力を増していたし、他の作品でも大抵それに類する理屈づけが行われているが、この作品では単純に「神を滅ぼさんと企む悪魔」となっていて、アメリカではそれだけで問題なく受け入れられるのだろうと思うと、これはちょっと面白いような気がする。