【映画の感想】(ビデオにて鑑賞)

『CUBE』
★★★★

 かなり面白い。閉塞的な雰囲気がよく伝わって来るし、展開の適当な意外性も楽しめる。ストーリーテリングのクオリティは非常に高いと思う。キャラクターの描き方も通り一遍でなく、スリルがある。
 …が、それでも観終わっての印象が「まあまあ」なのはなぜだろう?
 色々考えてはみたのだけど、結局のところこれは「適当にまとまり過ぎている」ということのような気がする。展開の小技やありがちな予測の裏をかく意外性などはうまく盛り込まれているが、大きな意外性は感じられないし、テーマめいたものもあまりインパクトをともなって伝わっては来ない。この作品ではとにかくそもそもの設定とシチュエーションが謎めいているわけで、その中で小技としての意外性を見せられても、常に心のどこかに全体としての大仕掛けを期待している部分があって、素直に演出について行けないようなところがあるのだ。
 それでも、私はこの作品がかなり気に入った。その気になればどんなごまかしでも押し通せるような設定の中で、かなり真面目にエンターテイメントを追求している姿勢が感じられるからだ。つまり、あからさまに「謎めいているだけ」で終わってしまう作品が結構多い中で、この作品は充分に光っていると思うのだ。
 「まあまあ」面白いということは、見方によっては「充分に」面白いということでもあるわけなのだし。

1999/05/30
『CUBE』
監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ
脚本:アンドレ・ビジェリック/ヴィンチェンゾ・ナタリ/グラアム・マンソン
製作総指揮:コリン・ブラントン
製作:メーラ・メー/ベッティ・オァー

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