【映画の感想】(ビデオにて鑑賞)

『TAXi』
★★★★

 ほとんどマンガだ。ノリは完全に『ルパン三世』。フランス映画にもこんなのがあるんだな、と、ちょっと驚き。

 この作品は、軽いノリで観られる「痛快娯楽映画」である。「リアリティ?何それ、食えるの?」という感じで、徹頭徹尾エンターテイメントに徹しているところに潔さを感じる。フランス映画とアニメ以外の日本映画はこういう方面を非常に苦手としているだけに、この作品は一際光っているように思える。
 ドタバタ風ギャグの描き方が全くドタバタしていないために、「あ、今のは笑うところだったんだな」と遅れて気付いたりする場面が結構あるのだが、それすらもハリウッド映画とは一味違うユーモアセンスとして、結構新鮮に感じる。要するに私はハリウッド映画のノリに飽きちゃっているから、毛色の違うエンターテイメント作品に出会って嬉しいという思いがこの作品の評価を上げてしまっているというところもあるかと思うが、どちらにしてもかなり楽しんで観られたことは確かだ。

 この作品のウリの一つである特撮なしのカーチェイスは、これまたハリウッド映画とはかなり違う仕上がりになっている。スピード感やクラッシュの迫力という面ではイマイチかなと思えるが、映画的な説得力のようなものがあるように思えた。私は基本的にカーチェイス場面というのはあまり好きではない。「車が猛スピードで追いかけっこをして、タイヤを鳴らしたりぶつかったりしたからどーだってーの?」と思ってしまうのだ。画面の迫力は確かに楽しめるのかもしれないが、「それより早くストーリーを進めてくれよ」という気がしてしまうのだ。出来の悪いミュージカルで、突然歌が始まった時に感じるのと同じ感覚かもしれない。しかし、この作品のカーチェイス場面は映画の中に自然に溶け込んでいる感じがして、妙な苛立ちは少しも感じなかった。これも好印象の大きな要因だろうと思う。

 最初から最後まで「この映画は娯楽作品ですよ!ギャグですよ!」という雰囲気があまりないため、思わず真剣に観てしまうと「なんだこりゃ、ふざけてる」ということになることがあるかもしれないが、軽いノリで観るおふざけ映画なのだということに早い段階で納得出来れば、結構誰にでも楽しめる作品なんじゃないかと思う。
 とりあえず、私は気に入った。

1999/10/24
『TAXi』
監督:ジェラール・ピレス
脚本:リュック・ベッソン
製作:リュック・ベッソン/ロラン・ペタン

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