【映画の感想】(ビデオにて鑑賞)

『L.A.コンフィデンシャル』
★★★★

 異色の刑事ドラマ…と言っていいんだろうな。なんだか色々な意味で、少々評価に迷ってしまう作品。

 1950年代のロサンゼルスを舞台に、人間臭い刑事たちのドラマを独特のリアリティたっぷりに描いたというのが、この作品の趣旨だと思う。刑事ドラマというと普通は刑事が解決すべく奮闘する事件とその行方を中心に描かれるものだけれど、この作品の場合は刑事たちのキャラクターと人間ドラマの方を中心に据えているところが面白い。キャラクターはやや類型的に思えるけれど、一人一人がかなり人間臭く描かれていて、説得力がある。その意味では非常に良く出来ていると思うし、観ていてとても楽しめる。
 では何が問題なのかというと、ラストに至ってかなり強引に「事件」の方が中心に来てしまい、一気に「解決」にまで持って行かれてしまうことだ。これによってそれまでグイグイと迫って来ていた「独特のリアリティ」がかなり吹き飛んでしまったように、私には感じられた。これはエンターテイメント作品としてのサービス精神というか、ある意味では外せない要素ということなのかもしれないし、難しいところだとは思うんだけれど。私としては、この作品には銃撃戦は要らなかったんじゃないかと、どうしても思えてしまうのだ。

 どうもこの作品は、舞台である1950年代のロサンゼルスの雰囲気を実にうまく再現しているらしい。ファッションにしろ小道具大道具にしろキャラクターの立ち居振る舞いにしろ、ほぼ完璧に作り上げてあるということだ。でも、そもそも1950年代のロサンゼルスを知らない私には、そんなことはわからない。ネコに小判だ。どうもある世代以上の「映画ファン」には「1950年代のロサンゼルス」に並々ならぬ思い入れのある人が多いらしく、そういう人にとってはたまらない空気をこの作品は提供してくれているらしい。それを感じられない私は少々残念に思うのと同時に、「それはちょっと違うんじゃないの?」とも思ったりする。そういうものをウリにするのなら、刑事ドラマではなくホームドラマや映画関係のストーリーにするべきなんじゃないだろうか。
 ただ、観ていて思ったのは、この「微妙な頽廃ムード」を演出するにはこの時代が丁度いいことも確かだろうな、ということ。現代を舞台にしたらもっともっとボロボロにドロドロになってしまいそうなところに、最後の一線を保った健全性を固持してもリアリティが失われないのは、やはりここまで時代を遡ったからなのだろうな、と。

 そんな風に色々と考えちゃったりもするこの作品だが、面白かったのかどうかと聞かれれば明らかに面白かったので、とりあえずお勧めではある。

1999/10/30
『L.A.コンフィデンシャル』
監督:カーティス・ハンソン
脚本:ブライアン・ヘルゲランド/カーティス・ハンソン
製作総指揮:ダン・コルスラッド/デビッド・L・ウォルパー
製作:アーノン・ミルチャン/マイケル・ネイサンソン/カーティス・ハンソン
原作:ジェームズ・エルロイ

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