かなり良く出来た映画だと思った。ブルース・ウィリスもなかなか味のあるキャラクターを演じているし、全体的に非常に丁寧に作られていることが伝わって来て感情移入しやすいし、そして何より主人公の少年の演技が素晴らしい。
…が、申し訳ないけれど私にとってはこの作品の「仕掛け」は最初からバレバレだった。映画が始まる前に「この映画のストーリーにはある秘密があります」というテロップが出た時点で大体の予想はついてしまい、序盤まで観たところでその予想が正しいことに確信を持ってしまった。死人を見てしまう少年と、そのケアをする精神科医が主人公の作品であることは予告編を一見した時点で判っているのだし、そのストーリーに「ある秘密」があると来たら、当然最初に思いつくのはこれだと思うのだけど…。普通は、そんなことは何も考えずに観るものなのだろうか。
そういうわけで、私はせっかくの「仕掛け」に驚くことが出来なかったのだけれど、それでもこの作品はなかなか楽しませてくれた。ホラーとかサスペンスとかのありがちなパターンに収まらない、どちらかと言えば「普通の」演出を丁寧に積み重ねて物語を進めて行くやり方が功を奏して、自然な感情移入を誘われる。とくに主人公の少年には、思わず同情してしまいたくなる。これには、親としての強さと弱さを合わせ持つ母親の描き方がしっかりしていることも大きく貢献していると思う。正直言って細かな疑問点はいくつかあるのだけれど、それを敢えてどうこう言う気にならないくらい、全体的に「しっかり」と「丁寧」な印象がこの作品にはある。
それだけに、ということなのかもしれないが、ちょっと残念なのは、ストーリーとしての内容がやや薄いように思えたこと。終盤で、少年にとっての問題は「一応解決した」あるいは「明確に解決に向かっている」というような描かれ方になっているが、どうも今一つそういう実感が伝わって来ない。中盤までの丁寧な積み重ねに比べて、この辺の展開が急過ぎるのかもしれない。「本当にそんなんでいいわけ?」という印象が残るのは、それまで(主人公の少年にとって)泥沼へ一直線だったベクトルが少しずつ上向いて行くという過程の演出が、少々足りなかったのじゃないかな、と感じた。
この作品は、表面的には「ホラーとサスペンスと家庭ドラマの要素を合わせ持つ映画」ということになりそうだけれど、実感としてはむしろ単純に、既存のジャンルに収まることを嫌った、ある意味非常に真面目なエンターテイメント映画、という気がする。
ストーリーの「仕掛け」についてはどれだけの人が驚けるのか私には判断がつかないが、それ抜きでもとりあえず観る価値のある作品だろうと思う。