かなり良く出来ていると思う。
寡黙で感情を表に出さない主人公というのはアメリカ映画には非常に珍しいが、この作品ではその主人公にうまく感情移入させてくれる。語り手を他に用意しているという点も効果的だと思うが、もっと感心したのは、長い時間の経過が自然にうまく表現され、観ている者が素直に納得出来るようになっていたことだ。これがうまく行くかどうかは、この作品の生死を分ける最重要課題だったのじゃないかと思う。つまり、この作品は成功なのだと私には思える。そしてまた、それがあまり強引な印象のない、比較的静かな演出の積み重ねでなされているところにセンスの良さを感じる。
もう一つ、やはりラストのカタルシスというのは、全てをキッチリと描き切ってこそ美しく決まるものなのだな、と改めて感じた。これも多くのアメリカ映画に欠けている点だろう。とくにアクション映画には見習って欲しい。
正直なところ、私はこの作品に大感動したわけでは決してないのだけれど、それでもかなり「好き」だとは思う。観ていて楽しめて、観終わっての印象もスッキリしていて、そして個人的に好きだと思える作品というのは、そうそうあるものではない。とりあえず、お勧めの作品と言っていいと思う。