【映画の感想】

『グリーンマイル』
★★★☆

 うーん…。
 もう、この際はっきり言ってしまおう。あまり面白くなかった。
 とても丁寧に作られていて、よく出来てもいると思う。役者の演技にも説得力があった。特別文句をつけるところはどこにもない。ほぼ原作に忠実で、独自に加えた部分も違和感なくマッチしていた。それじゃあ一体どうして面白くなかったのかというと、私が先に原作を読んでしまっていたからだ。
 この映画は、非常に原作に忠実に作られている。それも、かなり淡々とした調子で。だが、上映時間3時間以上にもなるとはいえ、映画である以上当然原作の多くの要素が省かれている。そして、独自に加えられた要素は非常に少なく、それらも映画を補強して原作に近づけるためのスパイスに過ぎないようだ。つまり、作品全体としての印象が、原作と全く同じなのだ。もう少し厳密に言うと、原作をやや小振りにまとめたもの、という感じだろうか。私はこの映画を観ていて、つい最近読んだ小説をもう一度読み返しているような印象を受けた。それだけこの映画は原作のエッセンスを忠実に表現することに成功しているわけで、これは実に大したものだと思う。しかし、私としては正直言ってあまり面白く感じられなかったのだ。これはもう、そうなんだから仕方がない。
 クライマックスでは、満員の映画館のあちこちからすすり泣きが聞こえて来た。私はなんだか損をしているような気がした。しつこいようだが、この映画の出来は非常に良いと思えるのだ。
 もし、この映画を観てから原作を読んだら、どんな印象になるのだろうか。ちょっと想像がつかないが、恐らくは原作を読んでから映画を観るよりはずっと面白いんじゃないかと思う。もし「どっちもこれから」という人がいたら、先に映画の方を観ることを強くお勧めしたい。くすん。

2000/05/13
『グリーンマイル』
監督:フランク・ダラボン
原作:スティーヴン・キング

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