【映画の感想】

『ミッション:インポッシブル2』
★★★☆

 なんだか「M:i-2」という表記の方が正式のタイトルであるような扱いになっているが、個人的にはこういうのはいい加減にしておいて欲しいと思う。私はいまだに『インディペンデンスデイ』がどうして「id4」なのかが判らないのだ。
 余談はさておき、今回はちょっとした成り行きで、私にしては珍しく公開直後の時期に映画館に足を運んだ。日劇はもちろんかなりの混雑だったが、しばらく待つ覚悟をして行ったら結果的にイイ席で観られたし、夏休み前に慌てておいたのは正解だったようだ。

 この作品の監督は、かのジョン・ウーである。主演は、かのトム・クルーズである。もうそれだけで、この作品の全てを言い切ってしまっているんじゃないかと思える。しかしこれで感想を終わっては私としても非常に寂しいので、もう少し細かいことを書いてみよう。
 とにかくもう、画面がカッコイイ。これが一番。音響や音楽もかなり効果的に使われてはいるが、何と言ってもアグレッシブなカメラワークとたたみかけるようなカット割りで見せてくれる絵造りが素晴らしい。ところどころに意外な視点のカットが一瞬だけ入っていて、それがまた強い「ヒキ」を生み出していたりするところは「さすがジョン・ウー監督」と感心させられる。やっていることは要するに昔からあるカーチェイスやバイクチェイス、銃撃戦、格闘などで、はっきり言って目新しい要素やアイディアはとくにないのだが、見せ方だけでこれだけ違ったものになっちゃうんだな、と少々ビックリでもある。
 ストーリーは完全に取ってつけた感じのものだし、キャラクターにも魅力はない。せめて悪役に個性があれば印象も変わるのだが、これも類型的で面白くない。『ミッション:インポッシブル』のアイデンティティを強調するということもとくにしておらず、内容的にはこれが『007』でも『香港国際警察』でも全く構わない感じだ。道具立てやトリックも非常に安易で、リアリティや説得力はほぼ皆無。それでも許せてしまうのは、全体を流れるノリのいいリズム感があるからだろう。そうなると逆に、こちらとしてはあれこれ考えたり気をもんだりすることなく画面に見とれることだけに専念出来るので、かえって都合がいいのかもしれない。凄いぞジョン・ウー監督。(笑)
 もう一つ感じるのは、やはりトム・クルーズは華のある俳優だな、ということ。主人公のキャラクターには前述のようにまるで個性も魅力もないし、ストーリー展開やシチュエーションにも説得力がない。それでも、何だかんだでトム・クルーズが画面を引き締めてしまうのだ。要するに、主人公イーサン・ハントは「トム・クルーズ扮するヒーロー」というだけのキャラクターなのだろう。だからトム・クルーズはとくに役を作ってフィルターを通す必要もなく、自らの魅力を100%画面から発散することが出来るのかもしれない。

 これはもう、なるべく大画面、大音響で、頭をカラッポにして観なくてはいけない作品だろう。私は多分、ショボイ環境で観たらどんなことになるのかが怖くて、そのうちこの作品のビデオが発売されたりTV放映があったりしても、観る気にはなれないだろうと思う。

2000/07/12
『ミッション:インポッシブル2』
製作総指揮:テレンス・チャン/ポール・ヒッチコック
製作:トム・クルーズ/ポーラ・ワグナー
監督:ジョン・ウー
脚本:ロバート・タウン
撮影:ジェフリー・L・キンボール
音楽:ハンス・ジマー

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