【映画の感想】

『ラマになった王様』
★★★★

 これ、全国で劇場公開されるディズニー映画としては、かなり異色なんじゃないかな。金のかかったゴージャスな映像もないし、バリバリのミュージカル仕立てでもないし、特別に話題性のあるロマンティックな題材を扱っているわけでもない。とにかく派手なところが一つもない、むしろオーソドックスで地味な作品なのだ。全体の雰囲気としては、言ってみれば「昔ながらのアメリカアニメ」という感じ。
 だが、これが意外に面白かった。ストーリーなんてタイトルを見ただけで全て判ってしまうし、何か微妙な深いドラマがあるわけでもなく、上記のように派手な要素があるわけでもないのだが、ノリのいいリズム感とキレのあるギャグで、とにかく笑える。これだけ素直に笑える映画を観たのは、久しぶりのような気がする。私は個人的に、アメリカ産のいわゆるカートゥーン・アニメの古臭くて乱暴なギャグセンスにはついて行けない方なのだが、そういう流れのギャグでもここまで洗練されれば笑わされちゃうんだな、と思い知らされた。そして、この作品ではそういうギャグが矢継ぎ早に繰り出され続けるだけではなく、ちゃんと要所要所で間を取って流れにメリハリをつけているところも好感大。全体の印象が地味なだけに「大傑作!」とバンザイをする気にはなれないのだが、単に「佳作」という言葉で言い表すのでは申し訳ないくらいに良く出来ていると思う。

 ちなみに今回、私は初めてディズニー映画を日本語吹き替えで観た。諸般の事情で上映館自体が少なく、近場で字幕版を上映しているところが見つからなかったからだ。ミュージカルは極力元の音声で観たいし、吹き替え版では主人公の声を若いアイドルタレントが演じていると聞いて非常に不安だったのだが、実はこれがまた案外イケていた。
 この作品ではいかにもミュージカルという「歌って踊る」シーンはオープニングのみで、しかもそこで歌っているのは主人公ではなく歌手(日本語版では西城秀樹)なのだ。歌としての質が明らかに落ちていてガッカリ、ということは少なくともなかった。そして、アイドルタレント演じる主人公の声は確かに声優として上手ではないのだが、演技としてはかなり頑張っていて、しかも声質がキャラクターにマッチしていた。主人公以外は上手な声優がしっかりと演じていたし、これはもしかすると字幕で観るよりも素直に楽しめたのじゃないかとすら思える。この点では非常にラッキーだった。

 結局のところ「素直に笑える」という以外にはとくに特筆すべきところのない作品なのだが、個人的にはそれだけで十二分だと思う。文句なしで「大人も楽しめる子供向け映画」だと言える。

2001/07/17
『ラマになった王様』
2001年 アメリカ作品
監督:マーク・ディンダル
製作:ランディー・フルマー
原案:クリス・ウィリアムス/マーク・ディンダル
脚本:デビッド・レイノルズ
音楽:スティング/デビッド・ハートレー
声の出演(日本語版):藤原竜也/楠見尚巳/京田尚子/堀内賢雄

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