【映画の感想】

『シュレック』
★★★☆

 なかなか楽しめた。「誰にでも馴染みのあるおとぎ話のキャラクター大集合」という、ある意味卑怯なまでに引きの強い趣向をソツなくまとめて、文字通り誰にでも楽しめるノリのある作品に仕上げてあると思う。基本的には子供向けの内容の中に、ちょっとオトナ向けのセリフやネタを盛り込んだりしているあたり、ハリウッド的な巧さを感じる。
 オールCGの画面の出来も、悪くない。全体にあまりツルツルノッペリした印象にならないよう、温かみのある質感を出す努力がなされていて、それが効果を上げている。お姫様の顔の造形も、人形っぽい印象にならないよう工夫が凝らされているので、マンガ的な可愛らしさという点では少々マイナスではあるが、これはこれでイイのではないかと思う。問題は、主人公のモンスターやロバに比べて、単なる人間であるお姫様や悪役の動作に不自然さが目立つこと。これはまあ、純粋に技術的な問題だと思うし、ある程度仕方のないことではあるのだろうけれど。

 全体的な不満点としては、せっかく「お馴染みのキャラクター大集合」のシチュエーションを設定したのだったら、もっとその線で押しまくって矢継ぎ早にネタを繰り出すような場面が多くあっても良かったのじゃないか、というのが一番。ストーリーとしてもソツなくまとまり過ぎている印象があるので、どうせならもっとアクの強いコメディにしちゃって欲しかったな、と。もちろんこれはごく個人的な趣味の問題ではあるけれど。私的に一番ウケたネタが「クッキーマンの拷問」だったりしたので、そういう強烈なギャグをもっと見たかったというのが本音なのだが、パロディというのは鋭いネタをかましてこそ価値があるというのが私の持論でもあるのだ。

[★ ネタバレ部分を呼び出す ★]

 もう一つ、ちょっと気になったのは、この作品では「人を外見で判断してはいけない」というのが主なメッセージになっているはずなのだが、その一方で悪役であるフィークアード卿の背の低さを散々コケにしてしまっていること。もとよりメッセージだのテーマだのが大切な作品ではないと思うのだが、それにしてもちょっとマズイんじゃないのかな、と思ってしまう。背が低いことを気にしている人がこれを観て不快に思わないか…なんていうのは安易な言葉狩りに血道を上げている連中が何も考えずに言うのと同じような主張で嫌なのだが、正直なところ、率直にそう感じずにはいられなかった。
 まあ、全体的にノリの良い仕上がりになっているので、意外とそういう心配も要らないのかもしれない、とも思ったりするのだが。

2002/01/05
『シュレック』
2001年 アメリカ作品
監督:アンドリュー・アダムソン/ヴィッキー・ジェンソン
製作:ジェフリー・カッツェンバーグ/アーロン・ワーナー/ジョン・H・ウィリアムズ
製作総指揮:ペニー・フィンケルマン・コックス/サンドラ・ラビンス/スティーヴン・スピルバーグ
原作:ウィリアム・ステイグ
脚本:テッド・エリオット/テリー・ロッシオ/ジョー・スティルマン/ロジャー・S・H・シュルマン
声の出演:マイク・マイヤーズ/エディ・マーフィ/キャメロン・ディアス/ジョン・リスゴー/ヴァンサン・カッセル

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