【映画の感想】

『猫の恩返し』
★★☆

 ディズニーアニメのようなヒネリのないプロット、朝の連続TVドラマのようなありきたりのテーマ、そして、演出にも、キャラクターにも、セリフにも、絵柄にも、動きにも、カメラワークにも、とにかくこれと言って見るべきところがない。それでも一応退屈もせず腹も立てずに観通せるだけのクオリティに仕上がっているのはさすがジブリ作品というべきなのかもしれないが、良くも悪くもここまで何もないと、拍子抜け以上になんだか呆れてしまう。ある意味、ジブリ初の「凡作」なんじゃないだろうか。
 とにかくもう、全てがありがちで普通で真っ当。悪く言えば平凡。こうなるともう、これはある種の習作なんじゃないかという気もして来る。実際、この作品の監督は突然に抜擢された「若手」(歳が若いかどうかの問題ではなく)らしい。ということは、次代を担う若手監督を育てるための習作として作られたのがこの作品なのだろうか。原作のマンガがこの作品のための書き下ろしであるというところにも異例の作為を感じるし、上映時間も短いし…。なんて余計なことを色々考えてしまうのは、やはり作品自体について考えることがないからなのかもしれない。
 とは言え、この作品は上記のようにそれなりのクオリティで仕上がっているし、大きな欠点もとくにない。ある種の「子供だまし」としては悪くない出来だろうと思える。これは別に皮肉でもないしけなしているわけでもない。言葉通りの意味で、純粋にそう思う。ある程度のクオリティで普通に子供を楽しませるだけの凡作をジブリが作ってはいけないという法があるわけでなし、今後はそういう方向性もあっていいのかな、と私はこの作品を観ていて思った。もしかすると、この作品(の企画)は「これからはこういうのもやりますよ」というジブリからのメッセージなのではないか、などと考えてしまったりするのは、やはりオタクの穿ち過ぎというものではあるだろうけれど。

2002/09/13
『猫の恩返し』
2002年 日本作品
プロデューサー:鈴木敏夫/高橋望
企画:宮崎駿
監督:森田宏幸
作画監督:井上鋭/尾崎和孝
脚本:吉田玲子
原作:柊あおい
音楽:野見祐二
美術監督:田中直哉
声の出演:池脇千鶴/袴田吉彦/岡江久美子/丹波哲郎

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