映像的には、かなり面白い。何種類かの絵柄を実験的に盛り込んでいるというだけでなく、それぞれの絵柄自体がある程度実験的なので、それだけで見ていて面白味がある。『ホーホケキョとなりの山田くん』では単なる手描きの置き換えにしか見えなかったフルデジタル彩色による「味の出し方」が、ようやく結実し始めたのじゃないかという気がする。背景の3D処理にも目新しさと自然さを感じたし、これはもしかすると日本のアニメ映像が新たなステージに上がる兆しなのかもしれない、などと考えたりもして。
…が、しかし、この映画を1本の作品として見ると、内容がとにかくつまらない。上映時間25分の短編に多くを望んでも仕方がないという面はあると思うが、短編ならではのパンチの効いた面白さというものだってあるはずだし、そうでなくても何かもう少し面白味を盛り込めるはずだと思うのだ。もしかするとネタとしては基本的に内輪受けの世界なのかもしれないが、今一つそういう風にも見えない。もしかするとこの作品の制作自体が何かの実験や練習だったりするのかもしれないが、どうもそこまでふっ切れている感じも見えない。どちらにしても、せめてもう少し「一見さん」が観て楽しめるように工夫するべきだと思う。高校の文化祭作品じゃないんだから。
