チャーミングな作品…なんて、なんだか私らしくない表現だが、それでもそういう言い方をしたくなるような映画だ。
観終わって冷静に考えてみると、テーマはありきたりだし、ストーリーもとくにどうということはないし、キャラクターなどにも特別な魅力があるわけではないし、結局のところどこにもこれといった新鮮味がない。しかし、場面場面の描写が丁寧で、役者の演技がしっかりしていて、つまるところ「キャラが立っている」ということなのだろうと思う。この作品は、設定もプロットもかなりファンタジックでありながら、一方では各キャラクターの人間味を前面に出して来るような演出になっている。となると、中途半端な仕上がりになりそうに思えるところなのだが、そこをうまく適度なリアリティを醸しながら童話的な異世界感を感じさせる形に仕上げてあるのが、この作品の凄いところなのだろうと私は感じた。
賞賛の意味を込めた「佳作」という言葉がこの作品にはピッタリ来るように思えるのだが、どうもこの言葉は一般的にもっと軽い(あるいは良くない)意味で使われることが多いので、この作品をそう評するのは少々申し訳ないような気がしてしまう。そうするとやっぱり「チャーミング」とかいうベタな表現に頼るしかないように思えて来る。やれやれ、私って意外と語彙が少ないのかな。