予想していたよりも面白かった。全体的に徹底して子供向けという方向性が顕著な作品なのだが、それにしては序盤のリロとナニの間の心の摩擦などがうまく描かれていて、大人でも感情移入を誘われる。またそれ以上に、スティッチというキャラクターが面白い。遺伝子に破壊のみを刷り込まれて生まれたという設定にしてはヌルいキャラだが、それを作ったのがマヌケな博士なのだから、研究自体がそう大したものでもなかったのだと考えれば納得も行く。それ以上に、「乱暴で凶悪でカワイイ」というキャラの属性がデザインからも仕草からも存分に発散されているのが大したものだと思う。一歩間違えるとワーナーアニメの大味で殺伐としたキャラのようになってしまいそうなところだが、そこを実にうまく踏み留まっている。このキャラクターは、ディズニーアニメにおいて近年稀に見るヒットなのじゃないかと、個人的には思っている。
序盤から中盤にかけての展開も、凶悪モンスターであるスティッチがリロの愛情に触れて変わって行った、などというわけでは全然なく、単に家族というものを知らなかった乱暴者のスティッチがリロと触れ合って戸惑いながら馴染んで行った、というだけのことだと考えれば納得できるし、実際私にはそう見えた。この辺の描き方も、なかなか良かったのじゃないかと思う。
しかし、クライマックス以後はとにかく派手なだけの強引なアクションで予定調和に雪崩れ込むというハリウッド的な展開に終始してしまい、残念感が大きかった。人情話としての演出も一応入ってはいるのだが、ウェットな感情を盛り上げるための演出がザックリと省略されている印象で、なんだか物語から突き放されたような気がしてしまう。ストーリーとしても、最終的には「結局誰も悪いヤツはいなかった」ということになってしまうのだが、だったらどうしてこんな悲劇的なこと(ハッピーエンドになったのは、どう考えてもたまたまだよね)になってしまったのか、という考察や反省が一切ないのに驚く。この辺はもう、「さすがアメリカ」と言うしかないのだろうか。
絵柄や画面に関してもとくにどうというところはないし、結局のところ作品全体としてはイマイチという感じなのだが、やはりスティッチのキャラクターが光っているので一見の価値アリということになると思う。ハッピーエンドを強調するラストの演出も悪くないし、個人的には意外と満足度の高い印象だった。