ショートショート作品 No.009

『労働』

 頭がもうろうとしている。
 そろそろ限界だ。
 いくらなんでももう体がもたない。
 ボールペンを持つ手がふるえている。
 一体これは何枚目の見積書だろう。
 目がかすんできた。
 気が遠くなる。
 もうだめだ・・・。

    + + + + +

「やりました!日本の山田選手、見事な記録で優勝です!」
「43時間53分12秒てすか・・・。大記録ですね・・・。」
「山田選手、書類にうずもれて眠っております。ごくろうさま、山田選手。日本に金メダルをありがとう。今は、ゆっくり寝かせてあげましょう。」
「・・・・・。」
「勝因は何でしょうね。」
「やっぱり、ほとんどの選手が10時間くらいでバカバカしくなって帰っちゃった事でしょうね。」
「そ、そうですね。しかし、これで世界に対する日本の印象も少しは・・・。」
「良くはならんでしょうね。やっぱり」
「はあ・・・。」
「誰が考えたんでしょうね、こんな企画。」


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