「あらまあ!奥さま、お久しぶり。今日はお買い物ですの?いいわねえ。」
「まあ、どうも!あら、いやですわ、お買い物ったってちょっとバーゲンへね。よろしかったら奥さまもご一緒にいかが?ウシウサギの毛皮が5割引ですってよ。」
「あら、欲しいわあ。でもあたくし、今年はもうメガネトカゲのコートを買っちゃったでしょ。これ以上買い物したら、亭主が熱だして寝込んじゃいますわ。」
「おほほ、いやあねえ!でも、奥さま、相変わらずお若くて羨ましいわあ。」
「あらやだ、とんでもない。最近目じりに小皺が目立つようになって来ちゃって。ドリアル先生に皺とりのお薬を作っていただこうかと思ってたところなんですのよ。」
「あら、いいわね。あたくしもそうしようかしら。あ、そうそう、ドリアル先生といえばね、先生の所に魔術の見習いの女の子がいるのご存知?」
「ええ。あの寸足らずでソバカスだらけの。」
「そうそう、その子。うふふ、その子がねえ・・・。」
「あら!どうしたんですの?」
「おほほ、最近の子は早熟というかマセてるというか・・・。」
「んまあ!相手は誰?」
「それがね、奥さま。ラシルスなんですの。」
「あらやだ。ラシルスといえば、ハンサムなだけが取り柄のプレイボーイだってもっぱらの噂じゃありませんこと?そういえば最近見かけませんけど。」
「そうなんですのよ。案の定、鼻もひっかけてもらえなくて。」
「そうなのよねえ。若い頃って、そういう時期があるのよねえ。」
「それであの子頭にきちゃって。どうしたと思います?」
「どうしたんですの?」
「それがねえ、なんと、ドリアル先生の魔術書を引っ張り出して、惚れ薬を作っちゃったんですって!」
「んまーあ!最近の子は大胆ねえ!あたくしなんかの頃には、物陰から愛の矢でねらうぐらいが関の山だったのに。」
「ほんとねえ。あたくしもビックリしちゃったわ。」
「それで?うまく飲ませたんですの?」
「ええ、もう、バッチリ。普通の3倍も飲ませちゃったんですって。」
「まあ、それじゃ、うまくいったんですのね。」
「それがね、奥さま。・・・クックックッ・・・もう、おかしくって。」
「あら!なんですの?」
「今度はあの子の方が、ラシルスから逃げまわってるんですのよ。」
「あらあら、また、どうして?」
「ラシルスの顔がねえ、風船みたいにふくれちゃって、色男が台なしになっちゃったんですって!」
「あらやだ!どうりで最近見かけないと思ったわ。それにしても、惚れ薬にそんな副作用があったなんてねえ。」
「それが、副作用じゃないんですのよ。」
「まあ、それじゃ、なんなんですの?」
「あの子ったら、ろくに魔術文字も読めないのに難しい本を見て作ったもんだから。」
「ああ、作り方を間違えちゃったんですのね。」
「いえ、そうじゃないの。」
「え?」
「惚れ薬だと思って作ったのが、腫れ薬だったんですって!」