ショートショート作品 No.023

『更正』

「皆さん今日は。今、こちらに元暴走族『烈怒』のメンバーだった方々がいらっしゃるということで、突撃インタビューにやってまいりました。あ、あなたがリーダーだった方ですか。どうぞよろしく。」
「ああ、どうも。」
「早速ですが、暴走族を結成したきっかけなどからお話し願えますか。」
「きっかけね・・・。まあ、なんていうか、俺達はみんな、まわりから差別されてて、頭に来てたんだよな。」
「差別、ですか?」
「そう。差別というかね、つまり、俺達の、その・・・肉体的特徴をさ、まわりのやつらは笑い者にしてやがったんだよ。」
「ははあ、なるほど。」
「で、そういう鬱積してた気分がさ、一気に爆発しちゃったんだな。もともと俺達なんてェのは、突っ走るしか能がないしね。あとは、そのまんま惰性でって感じだな。」
「『烈怒』という名前は、やはりそこから来ている訳ですか。」
「そう。俺達を笑い者にしてたやつらへのあてつけでね。我ながら若かったよな。いきがっちゃってさ。後先考えなかったんだよね。なんだかんだいったって、それで見直される訳でもないしね。結局、笑い者が鼻つまみものに変わっただけだった。」
「気分は晴れなかった訳ですね。」
「最初はさ、晴れたんだよ。始めた頃はね。新鮮だったし。だけど、それもマンネリ化しちゃうと、もうだめだったね。結局はアウトローでしかない訳だしさ、どっちにしろまわりは誰も相手にしてくれないってんでね。かえってささくれ立った気分になっちゃったね。」
「それで、解散するきっかけになったのは・・・。」
「それはもう、一発だったよ。あの人が現れたんだから。今の俺達の雇い主がね。俺達もいいかげんいやになってたしさ。第一、あの人の言葉が俺達にはすごく嬉しかったんだよ。俺達をさ、必要としてくれるってんだから。『今宵こそは!』って思ったね。」
「有名な話ですね。」
「そうかい。まあ、とにかく、俺達は今の仕事がすごく気に入ってるんだ。一生続けるつもりだよ。最近は、だいぶお客が減っちまったけどね。飛行機も増えたし。夢を売る商売だけど、まあ、やりがいはあるよ。」
「そうですか。頑張ってくださいね。応援している人はまだ世界中に沢山いますよ。」
「ああ、ありがとう。それじゃ、もう行かなくちゃ。そろそろ時期なんでね。忙しいんだ。」
「今日はどうもありがとうございました。」
「行くぜ!野郎ども!!」
「オウッ!!!」
 そして彼らは、粉雪の舞い散る夜空を駆け昇って行った。


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