【本の感想】

『我らが隣人の犯罪』

 宮部みゆきの短編集。今度は現代を舞台にした「普通の」ミステリーだ。
 率直な印象としては、気の利いた、読後感の良い、ミステリー風の軽い読み物、といった感じ。私には『かまいたち』よりもこちらの方が楽しめた。
 この本には五編の作品が収められているが、内容がバラエティに富んでいて飽きない。題材だけ見ても、子供を主人公にした「ちょっとしたミステリー」があれば刑事を主人公にした殺人事件もあるという具合で、型にとらわれない感じが好ましい。
 生真面目な書き方で予定調和を重んじる印象は、やはり変わらない。この本に収められている作品に関しては、筋立てやトリックが陳腐過ぎて全て見通せてしまうということもあまりなかった。ただし、その分トリックに少々強引なところが目立ち、説得力という意味では今一つという気がする。もっとも、トリックの精密さにこだわって読むよりも素直に雰囲気と読後感を楽しもうという気にさせてくれる作品群ではあると思う。

[★ ネタバレ部分を呼び出す ★]

 この本を読んで、私の宮部みゆき作品に対する印象はかなり良くなった。少なくともあと何冊かは読んでみる事になるだろう。

1997/07/22
『我らが隣人の犯罪』
宮部みゆき著
文春文庫(み17-1)

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