【本の感想】

『Delphi Q&A150選』

 文句なくお勧めの一冊。
 本書は、タイトル通り一問一答形式で150の問題について解説してある本だ。問題の内容はNiftyServeのSBORLAND(ボーランド・ステーション)に寄せられた質問を元にしてあり、それだけにとても現実的かつ実用的なものになっている。本格的にプログラミングを始めるとまずぶつかるけれど、マニュアルや入門書からは得られないという情報が満載された、非常に出来の良いFAQ*と言えるだろう。また、付録CD-ROMにはサンプルプログラムやオリジナルコンポーネントが収録されているのはもちろん、本書の内容をほとんど丸ごと収めたHELPファイルまで収録されていて、これが非常に有り難い。Delphiの統合環境から参照できるようにインストールしておけば、キーワードによる検索も出来て非常に便利だ。
 入門書を卒業して本格的にプログラムを組めるようになりつつあるユーザーが、ふとしたことでぶつかって立ち往生してしまいがちな疑問を、本書はかなりの確率で解決してくれる。中級者向けの良質な解説書が少ない(全然ないかもしれない)現状では、全てのDelphiプログラマ必携の書と言ってもいいかもしれない。

 ただ、一つ大きな不満がある。本書では、難度の高い問題にはそれを解決するべく作られたオリジナルコンポーネントを提供し、その使い方を説明することで解決としている部分がある。それらについて一つ一つしっかりと技術的な解説をすることは困難だと思うし、提供されるオリジナルコンポーネントにはソースコードが付属しているので、興味のある者はそれを参照するということでいいと思う(本書の序文にもそう書いてある)のだが、問題はそのソースコードに全くと言っていいほどコメントが書かれていないことなのだ。これではおいそれと読むわけにも行かない。少なくとも今の私の知識ではお手上げといった部分が多いし、理解できた部分もかなり苦労させられた。もちろんそれは私のスキルが低いからでもあるのだけれど、スキルが充分ならそもそも本書の必要性は薄いのだ。
 本書提供のオリジナルコンポーネントは、やはりさすがに実用的なものが多い。それらのソースコードに詳細なコメントが付いていたら、それはまた一冊の良質な解説書にも匹敵する価値を持つと思うし、いきおい本書の価値も倍増するのではないだろうか。制作者にはぜひご一考をお願いしたい。

1997/11/19
『Delphi Q&A150選』
大野元久 著
ボーランド株式会社 監修
ビレッジセンター出版局

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