【映画の感想】(ビデオにて鑑賞)

『アンナ・カレーニナ』
★☆

 「奥様よろめきドラマ」だねこりゃ。
 世の中には色々な世界があって、誰もがその中で真剣かつ深刻に生きているということは理解しているつもりでも、この作品世界とキャラクターにはちっとも共感出来なかった。恋愛感情の盛り上がりとすれ違いのドラマとしてそれなりにうまく描かれていると感じる部分もあったにはあったが、それだったら日本のTVドラマにだって充分にある。
 私はトルストイの原作も知らないし過去の映画化作品も知らないので、単純にこの作品をこの作品として観ただけなのだが、その限りにおいては正直言って面白くなかった。
 ストーリーは元々ほとんどないようなものだし、問題はやはりキャラクターに感情移入出来なかったことなのだろう。とくにブロンスキーは全然ダメだった。個人的にこのタイプのルックスがあまり好きでないこともあると思うのだが、それ以上にとにかく心情的なものがほとんど伝わって来ない。アンナへの熱烈な愛情さえもだ。そうなるともう、行動から言って単に不実で強引な男でしかなくなってしまう。アンナ役のソフィー・マルソーはとてもキレイで私好みでもあるのだけれど、やはりほとんど心情は伝わって来なかった。どうしても限りなく愚かなだけの女に見えてしまう。
 上記の通り私は読んでいないので知らないが、要するに原作はこのテのメロドラマの元祖のような歴史的価値があり、ラストも当時としては衝撃的なものだった、ということなのじゃないだろうか。だとすれば、それを今になって映画化するのであれば、時代に合わせた様々な工夫が必要になるはずなのに、とくにそれをしないまま作ってしまったのがこの作品、という気がする。それも一つの作品への誠意と取れなくもないが、面白くないんじゃそもそも価値がないと私は思う。
 どうせやるなら、ディカプリオの『ロミオ&ジュリエット』までイッちゃってた方が私は好きだなあ。

1999/10/23
『アンナ・カレーニナ』
監督/脚本:バーナード・ローズ

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