島田荘司氏の御手洗潔シリーズは、現在文庫で出ているのはこの作品まで。(刊行順で言えば、この後に『異邦の騎士』改訂完全版が来るのだけど)
このシリーズの近作は非常に分厚くなって来ているのだが、この本はまた笑っちゃうくらいに分厚い。なんと980ページもある。お値段1,160円。平均的な文庫本2〜3冊分だ。そして、この作品の構成はとにかくこの分量をいっぱいに使い切って、あらゆる謎とわだかまりを引っ張って引っ張って、引っ張りまくる。読者はストイックというより既にマゾヒスティックなまでに焦らされ、『水晶のピラミッド』でも感じたタルさにイラつかされ、やたら沢山出て来るアメリカ人キャラクターの名前を覚えるのに疲れ、松崎レオナと一緒に追い詰められ打ちのめされ、救いのヒーロー御手洗潔がようやく登場するのは終盤も終盤ということになる。やれやれだ。
しかし、それだけに一気に読まされてしまったことも確かで、更には読み終わって「あーもー嫌な作品だったなあ」という怒りや反発も沸いて来ない。やはり島田荘司氏の筆力に引き込まれていたということなのだろう。
ともあれ、これでまた当分御手洗潔シリーズ作品が読めないのかと思うと少し寂しい気もする。もっとも、こんな分量の作品を頻繁に出されても、読むのに疲れてしまって困るというものだけど。